ACLを制御するシンプルなアプリケーション

注釈

このチュートリアルは初心者向けではありません。もし CakePHP を始めたばかりなら、 このチュートリアルに挑戦する前にまずはフレームワークの機能をひととおり体験しておくことを おすすめします。

このチュートリアルでは 認証アクセス制御リスト を用いたシンプルな アプリケーションを作成します。このチュートリアルにはいくつかの前提があります。 CakePHP のある程度の経験と、MVCの概念についての理解、 ブログチュートリアル を既に読み終わっていて、 Bakeでコード生成 についてよく知っていることを 必要とします。このチュートリアルは AuthComponentAclComponent の簡単な紹介になります。

必要なもの

  1. 稼動しているウェブサーバー。 Apache を使っているという前提で書いてありますが、 他の種類のサーバーを使用する場合でも、ほぼ同じにいけるはずです。サーバーの設定を 少し変える必要があるかもしれませんが、たいていの人は、そのままの設定で CakePHP を 動作させることが可能です。

  2. データベースサーバー。このチュートリアルでは MySQL を利用します。 CakePHP におけるアプリケーションの作成は、まずデータベースを作成することからはじめますので、 これに必要な SQL の知識を必要とします。

  3. 基本的な PHP の知識。オブジェクト指向のプログラミングについて知っていると より良いでしょう。しかし手続き型言語としての知識しかなくても問題はありません。

アプリケーションの準備

まず、最新の CakePHP のコピーを取得しましょう。

最新版をダウンロードするには GitHub の CakePHP プロジェクト( https://github.com/cakephp/cakephp/tags) にアクセスし、安定版のリリースを ダウンロードしてください。このチュートリアルで必要なバージョンは最新の 2.0 リリースです。

git を使ってレポジトリを複製 (clone) することもできます。

git clone -b 2.x git://github.com/cakephp/cakephp.git

CakePHP の最新の 2.0 リリースのコピーを取得したら、 database.php を設定し、 app/Config/core.php の Security.salt の値を変更してください。 それから、アプリケーションを構築するための簡単なデータベーススキーマを作成しましょう。 次の SQL 文をデータベースに実行してください:

CREATE TABLE users (
    id INT(11) NOT NULL AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
    username VARCHAR(255) NOT NULL UNIQUE,
    password CHAR(40) NOT NULL,
    group_id INT(11) NOT NULL,
    created DATETIME,
    modified DATETIME
);

CREATE TABLE groups (
    id INT(11) NOT NULL AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
    name VARCHAR(100) NOT NULL,
    created DATETIME,
    modified DATETIME
);

CREATE TABLE posts (
    id INT(11) NOT NULL AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
    user_id INT(11) NOT NULL,
    title VARCHAR(255) NOT NULL,
    body TEXT,
    created DATETIME,
    modified DATETIME
);

CREATE TABLE widgets (
    id INT(11) NOT NULL AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
    name VARCHAR(100) NOT NULL,
    part_no VARCHAR(12),
    quantity INT(11)
);

これらのテーブルはアプリケーションの残りを作成する時に使用します。 データベースにこのテーブルを作成したら、クッキングを開始しましょう。 モデルとコントローラ、そしてビューのコードを、 Bakeでコード生成 を使って簡単に作成して下さい。

cake の bake を使うにあたって、「cake bake all」を呼び出すと、先ほど MySQL に作成した 4つのテーブルがリストされます。「1 (Group).」を選び、プロンプトに従って下さい。 その他の3つのテーブルでも同じ手順を繰り返すと、合計4つのコントローラ、モデルそしてビューが 作成されます。

ここでスキャフォールド (Scaffold) は使わないでください。スキャフォールドの仕組みを 用いたコントローラを bake すると、ACO の生成に深刻な影響が生じます。

モデルを bake する時、cake は自動的にモデル間のつながり(あるいはテーブル間の関連)を検知します。 cake に正しい hasMany や belongsTo のつながりを教えてください。hasOne と hasMany の両方を 選べるようプロンプトに表示された場合、このチュートリアルではとりあえず hasMany (だけ)を 選んでおけば問題ありません。

admin routing のことは今は忘れてください。認証とアクセス制御リストはそれだけでとても 複雑なことなので、admin routing についてひとまず置いておきます。 bake で作成したコントローラには Acl や Auth コンポーネントを追加 しない よう注意してください。これは後ほど行います。 これで、テーブル「users」「groups」「posts」「widgets」に対するモデル、 コントローラおよびビューができました。

Auth を追加する準備

この段階で、動作する CRUD アプリケーションが出来上がりました。 bake は必要なリレーションを全て行っているでしょうが、もしまだならそれを済ませてください。 Auth と Acl コンポーネントを追加する前に、多少の部品を加える必要があります。 まずは UsersController にログインとログアウトのアクションを加えましょう:

public function login() {
    if ($this->request->is('post')) {
        if ($this->Auth->login()) {
            return $this->redirect($this->Auth->redirect());
        }
        $this->Session->setFlash(__('Your username or password was incorrect.'));
    }
}

public function logout() {
    //ここは、今は空にしておいてください
}

更に、以下の様にビューファイルを app/View/Users/login.ctp に作成してください:

<?php
echo $this->Form->create('User', array('action' => 'login'));
echo $this->Form->inputs(array(
    'legend' => __('Login'),
    'username',
    'password'
));
echo $this->Form->end('Login');
?>

次に、パスワードをデータベースに入る前にハッシュ化するように User モデルを書き換える 必要があります。平文のパスワードを保存するのは極めて危険であり、また AuthComponent は パスワードがハッシュ化されていることを期待します。 app/Model/User.php で以下を追加してください:

App::uses('AuthComponent', 'Controller/Component');
class User extends AppModel {
    // 他のコード。

    public function beforeSave($options = array()) {
        $this->data['User']['password'] = AuthComponent::password(
          $this->data['User']['password']
        );
        return true;
    }
}

次に行うことは、 AppController に変更を加えることです。 /app/Controller/AppController.php が存在しない場合は、作成してください。 コントローラ全体に認証と ACL を行うなら、この AppController に対してセットアップを 行います。次のコードを加えてください:

class AppController extends Controller {
    public $components = array(
        'Acl',
        'Auth' => array(
            'authorize' => array(
                'Actions' => array('actionPath' => 'controllers')
            )
        ),
        'Session'
    );
    public $helpers = array('Html', 'Form', 'Session');

    public function beforeFilter() {
        // AuthComponent の設定
        $this->Auth->loginAction = array(
          'controller' => 'users',
          'action' => 'login'
        );
        $this->Auth->logoutRedirect = array(
          'controller' => 'users',
          'action' => 'login'
        );
        $this->Auth->loginRedirect = array(
          'controller' => 'posts',
          'action' => 'add'
        );
    }
}

ACL をセットアップし終わってしまう前に、ユーザとグループを作成しましょう。 この状態ではまだログインしていないため、 AuthComponent の働きにより、 どのアクションにもアクセスできません。そこで、グループとユーザを作成することを AuthComponent に許可させるために、いくつかの例外を設けましょう。 GroupsControllerUsersController両方 に、次のコードを追加してください:

public function beforeFilter() {
    parent::beforeFilter();

    // CakePHP 2.0
    $this->Auth->allow('*');

    // CakePHP 2.1以上
    $this->Auth->allow();
}

この記述は AuthComponent に、全てのアクションに対するパブリックなアクセスを許可するよう 指定するものです。これは一時的なものであり、データベースにいくつかのユーザとグループを 作成したら除去します。ユーザとグループはまだ追加しないでください。

ACL のデータベーステーブルの初期化

ユーザとグループを作成する前に、これらをACLに接続します。しかし、この段階では ACL に関する テーブルが存在しないため、どのページを開いてもテーブルが見つからないというエラー( 「Error: Database table acos for model Aco was not found.」)が表示されます。 このエラーを解消するには、スキーマファイルを実行します。シェルで次のコマンドを実行してください:

./Console/cake schema create DbAcl

テーブルのドロップと作成についてプロンプトが表示されます。 テーブルの破棄および作成を行うには、「yes」を入力してください。

シェルを使えない、あるいはコンソールの使用に問題が生じた場合は、 /path/to/app/Config/Schema/db_acl.sql の SQL ファイルを実行してください。

ここまでで、データの投入を行うコントローラの用意と ACL テーブルの初期化を行いました。 しかしまだ準備は終わっていません。ユーザとグループのモデルに対して、もう少しやることがあります。 これらのモデルに ACL に関わるからくりを追加していきましょう。

リクエスタとして振舞う

Auth と ACL をきちんと動作させるには、ユーザとグループを ACL テーブルの列に関連付ける 必要があります。これを行うには、 AclBehavior を使用します。 AclBehavior を使うと、モデルと ACL テーブルを自動的に結びつけることができます。 これを使用するにあたり、モデル中で parentNode() を実行する必要があります。 User モデルに次のコードを追加してください:

class User extends AppModel {
    public $belongsTo = array('Group');
    public $actsAs = array('Acl' => array('type' => 'requester'));

    public function parentNode() {
        if (!$this->id && empty($this->data)) {
            return null;
        }
        if (isset($this->data['User']['group_id'])) {
            $groupId = $this->data['User']['group_id'];
        } else {
            $groupId = $this->field('group_id');
        }
        if (!$groupId) {
            return null;
        } else {
            return array('Group' => array('id' => $groupId));
        }
    }
}

Group モデルには、次のコードを追加します:

class Group extends AppModel {
    public $actsAs = array('Acl' => array('type' => 'requester'));

    public function parentNode() {
        return null;
    }
}

このコードは、 Group モデルと User モデルを ACL に結びつけ、 UserGroup をデータベースに登録した時、常に CakePHP が aros にも同様の登録を行うようにしています。これにより、 users および groups テーブルを ARO と透過的に結びつける ACL の管理機能を、アプリケーションの一部として作成できました。 ユーザーやグループを作成したり削除すると、常に ARO のテーブルも更新されます。

コントローラとモデルは初期のデータを追加する用意ができ、 GroupUser モデルは ACL テーブルに結び付けられました。 では http://example.com/groups/addhttp://example.com/users/add を開き、bake で焼いたフォームを使ってグループとユーザを追加しましょう。 次のグループを作成します。

  • administrators

  • managers

  • users

各グループにユーザを作成することもできるので、後でテストするために各々の異なる アクセスグループにユーザを作成します。忘れてしまわないよう、パスワードは書きとめておくか、 簡単なものを使うようにしてください。MySQL のプロンプトで SELECT * FROM aros; を実行した場合、次のような結果を取得できるでしょう:

+----+-----------+-------+-------------+-------+------+------+
| id | parent_id | model | foreign_key | alias | lft  | rght |
+----+-----------+-------+-------------+-------+------+------+
|  1 |      NULL | Group |           1 | NULL  |    1 |    4 |
|  2 |      NULL | Group |           2 | NULL  |    5 |    8 |
|  3 |      NULL | Group |           3 | NULL  |    9 |   12 |
|  4 |         1 | User  |           1 | NULL  |    2 |    3 |
|  5 |         2 | User  |           2 | NULL  |    6 |    7 |
|  6 |         3 | User  |           3 | NULL  |   10 |   11 |
+----+-----------+-------+-------------+-------+------+------+
6 rows in set (0.00 sec)

3つのグループと3人のユーザが存在することがわかります。ユーザは各グループにネストされており、 これはグループ単位もしくはユーザ単位でパーミッションを設定できることを意味します。

グループだけの ACL

グループごとのみのパーミッションに単純化したい場合、 User モデルに bindNode() を実装する必要があります:

public function bindNode($user) {
    return array('model' => 'Group', 'foreign_key' => $user['User']['group_id']);
}

User モデルの actsAs を更新して、 requester ディレクティブを無効化します:

public $actsAs = array('Acl' => array('type' => 'requester', 'enabled' => false));

これら2つの変更は、ACL に User の ARO のチェックを省き、 Group の ARO のみを チェックするように伝えます。これは、afterSave が呼ばれることを避けます。

注意: これを動作させるために、全てのユーザーに group_id を割り当てる必要があります。

この場合、 aros テーブルは以下のようになるでしょう:

+----+-----------+-------+-------------+-------+------+------+
| id | parent_id | model | foreign_key | alias | lft  | rght |
+----+-----------+-------+-------------+-------+------+------+
|  1 |      NULL | Group |           1 | NULL  |    1 |    2 |
|  2 |      NULL | Group |           2 | NULL  |    3 |    4 |
|  3 |      NULL | Group |           3 | NULL  |    5 |    6 |
+----+-----------+-------+-------------+-------+------+------+
3 rows in set (0.00 sec)

注意: もしこのポイントまでチュートリアルに追随しているなら、 aros, groups, users を含むテーブルを削除する必要があり、 aros テーブルを上記のように取得するために、 再び groups と users を最初から作成してください。

ACO(Access Control Objects)の作成

ユーザとグループ (ARO) を作成しましたので、ログインとログアウトができるよう、 コントローラを ACL に登録し、グループとユーザにパーミッションを設定しましょう。

ユーザとグループを作成したとき、ARO は自動的に作成されます。 ではコントローラとアクションを ACO として自動的に作成するにはどのようにすればよいでしょうか。 残念ながら、CakePHP コアにはこれを自動的に行う方法はありません。 しかし CakePHP のコアクラスには、手動で ACO を作成する方法がいくつかあります。 ACO オブジェクトを作成するには、ACL シェルを用いるか、 AclComponent を使用します。 シェルで ACO を作成するには、次のようにします:

./Console/cake acl create aco root controllers

AclComponent を使う方法は次のようになります:

$this->Acl->Aco->create(array('parent_id' => null, 'alias' => 'controllers'));
$this->Acl->Aco->save();

この両方の例では、「controllers」という名のトップレベルの ACO (あるいは根ノード) を作成しています。 これの目的は二つあります。ひとつはアプリケーション全体に対するアクセス可否を簡単にすること、 そしてモデルレコードのパーミッションをチェックするようなコントローラとアクションに関連することには ACL を使用しないということです。グローバルなルート ACO を使用するには、 AuthComponent の 設定を若干変更する必要があります。ACL がコントローラとアクションを走査するにあたり正しい ノードパスを使用するために、 AuthComponent に根ノードの存在を教えてください。 これを行うには、先のコードで定義してあるように、 AppController$components で、 配列が actionPath を必ず含むようにしてください:

class AppController extends Controller {
    public $components = array(
        'Acl',
        'Auth' => array(
            'authorize' => array(
                'Actions' => array('actionPath' => 'controllers')
            )
        ),
        'Session'
    );

チュートリアルを続行するには、続けて ACL を制御するシンプルなアプリケーション - パート2 を見てください。