ミドルウェアオブジェクトは、再利用可能で構成可能なリクエスト処理、あるいは レスポンス構築処理の層でアプリケーションを「ラップ」する機能を提供します。 視覚的には、アプリケーションは中央で終了し、ミドルウェアはタマネギのように アプリの周囲を包み込みます。ここでは、Routes、Assets、例外処理、および CORS ヘッダーミドルウェアでラップされたアプリケーションを確認できます。
アプリケーションによってリクエストが処理されると、最も外側のミドルウェアから リクエストが入力されます。各ミドルウェアは、リクエスト/レスポンスを次のレイヤーに委譲するか、 またはレスポンスを返すことができます。レスポンスを返すことで、下位層がリクエストを見なくなります。 たとえば、開発中にプラグインの画像のリクエストを処理する AssetMiddleware がその例です。
ミドルウェアがリクエストを処理するアクションを受け取らない場合、コントローラーが用意され、 そのアクションを呼び出すか、例外が発生してエラーページが生成されます。
ミドルウェアは CakePHP における新しい HTTP スタックの部分で、 PSR-7 のリクエスト およびレスポンスのインターフェイスを活用しています。 PSR-7 標準の活用によって、 Packagist で利用可能な、あらゆる PSR-7 互換の ミドルウェアを使うことができます。
CakePHP はウェブアプリケーションの一般的なタスクを処理するいくつかのミドルウェアを提供します。
Cake\Error\Middleware\ErrorHandlerMiddleware
はラップされたミドルウェアからくる
例外を捕まえ、 エラーと例外の処理 の例外ハンドラーを使ってエラーページを描画します。
Cake\Routing\AssetMiddleware
はリクエストが、プラグインの webroot フォルダー
あるいはテーマのそれに格納された CSS 、 JavaScript または画像ファイルといった、
テーマまたはプラグインのアセットファイルを参照するかどうかを確認します。
Cake\Routing\Middleware\RoutingMiddleware
は受け取った URL を解析して、
リクエストにルーティングパラメーターを割り当てるために Router
を使用します。
Cake\I18n\Middleware\LocaleSelectorMiddleware
はブラウザーによって送られる
Accept-Language
ヘッダーによって自動で言語を切り替えられるようにします。
Cake\Http\Middleware\SecurityHeadersMiddleware
は、 X-Frame-Options
のようなセキュリティに関連するヘッダーをレスポンスに簡単に追加することができます。
Cake\Http\Middleware\EncryptedCookieMiddleware
は、難読化されたデータで
Cookie を操作する必要がある場合に備えて、暗号化された Cookie を操作する機能を提供します。
Cake\Http\Middleware\CsrfProtectionMiddleware
は、アプリケーションに CSRF
保護を追加します。
ミドルウェアは、アプリケーションの全体、または個々のルーティングスコープに適用できます。
全てのリクエストにミドルウェアを適用するには、 App\Application
クラスの
middleware
メソッドを使用してください。
もし App\Application
クラスを持っていない場合、詳しくは 既存アプリケーションへの新しい HTTP スタック追加
の当該のセクションを参照してください。アプリケーションの middleware
フックメソッドは
リクエスト処理の開始時に呼ばれて、 MiddlewareQueue
オブジェクトを加えることができます。
namespace App;
use Cake\Http\BaseApplication;
use Cake\Error\Middleware\ErrorHandlerMiddleware;
class Application extends BaseApplication
{
public function middleware($middlewareQueue)
{
// ミドルウェアのキューにエラーハンドラーを結びつけます。
$middlewareQueue->add(new ErrorHandlerMiddleware());
return $middlewareQueue;
}
}
MiddlewareQueue
の末尾に追加するだけではなくて、さまざまな操作をすることができます。
$layer = new \App\Middleware\CustomMiddleware;
// 追加されたミドルウェアは行列の末尾になります。
$middlewareQueue->add($layer);
// 追加されたミドルウェアは行列の先頭になります。
$middlewareQueue->prepend($layer);
// 特定の位置に挿入します。もし位置が範囲外の場合、
// 末尾に追加されます。
$middlewareQueue->insertAt(2, $layer);
// 別のミドルウェアの前に挿入します。
// もしその名前のクラスが見つからない場合、
// 例外が発生します。
$middlewareQueue->insertBefore(
'Cake\Error\Middleware\ErrorHandlerMiddleware',
$layer
);
// 別のミドルウェアの後に挿入します。
// もしその名前のクラスが見つからない場合、
// ミドルウェアは末尾に追加されます。
$middlewareQueue->insertAfter(
'Cake\Error\Middleware\ErrorHandlerMiddleware',
$layer
);
アプリケーション全体にミドルウェアを適用するだけでなく、 スコープ付きミドルウェアの接続 を使用して、特定のルートセットにミドルウェアを適用することができます。
アプリケーションによってミドルウェアのキューが準備された後に、 Server.buildMiddleware
イベントが引き起こされます。このイベントはプラグインからミドルウェアを追加するのに便利です。
プラグインは、それらのブートストラップスクリプトの中でリスナーを登録することができて、
それらがミドルウェアを追加します。
// ContactManager プラグインの bootstrap.php の中で
use Cake\Event\EventManager;
EventManager::instance()->on(
'Server.buildMiddleware',
function ($event, $middlewareQueue) {
$middlewareQueue->add(new ContactPluginMiddleware());
});
PSR-7 リクエストとレスポンスインターフェイス の先頭でミドルウェアと新しい HTTP スタックは構築されます。すべてのミドルウェアは これらのインターフェイスに触れることになりますが、コントローラー、コンポーネント およびビューは そうではありません 。
RequestInterface
は、リクエストのヘッダー、メソッド、 URI 、およびボディーと対話するための
メソッドを提供します。ヘッダーと対話するには、このようにします。
// ヘッダーをテキストとして読みます
$value = $request->getHeaderLine('Content-Type');
// ヘッダーを配列として読みます
$value = $request->getHeader('Content-Type');
// すべてのヘッダーを連想配列として読みます
$headers = $request->getHeaders();
リクエストは、それらが持つクッキーやアップロードされたファイルへのアクセスも提供します。
// クッキーの値の配列を得ます。
$cookies = $request->getCookieParams();
// UploadedFile オブジェクトの配列を得ます
$files = $request->getUploadedFiles();
// ファイルデータを読みます。
$files[0]->getStream();
$files[0]->getSize();
$files[0]->getClientFileName();
// ファイルを移動します。
$files[0]->moveTo($targetPath);
リクエストは URI オブジェクトを持っており、それがリクエストされた URI と対話するための メソッドを持っています。
// URI を得ます
$uri = $request->getUri();
// URI の中からデータを読み取ります。
$path = $uri->getPath();
$query = $uri->getQuery();
$host = $uri->getHost();
最後に、リクエストの‘属性’と対話することができます。 CakePHP はフレームワーク固有の リクエストパラメーターを用いるためにこの属性を利用します。 CakePHP によって処理される どのリクエストにおいても重要ないくつかの属性があります。
base
は、もしあればアプリケーションのベースディレクトリーを持っています。
webroot
は、アプリケーションの webroot ディレクトリーを持っています。
params
は、ルーティング規則が処理された後で、ルートマッチングの結果を持ちます。
session
は、 CakePHP の Session
オブジェクトのインスタンスを持っています。
セッションオブジェクトをどう使うかについての詳しい情報は セッションオブジェクトへのアクセス
を参照してください。
サーバーレスポンスを作成するために利用できるメソッドは、 レスポンスオブジェクト と対話する時に利用できるものと同じです。インターフェイスは同じですが、利用シナリオは 異なっています。
レスポンスを変更する時には、レスポンスが 不変 であることを覚えておくことが重要です。 すべてのセッターメソッドの結果を格納することをいつでも覚えていてください。例えばこのように。
// これは $response を変更 *しません* 。新しいオブジェクトが
// 変数に代入されませんでした。
$response->withHeader('Content-Type', 'application/json');
// これは動きます!
$newResponse = $response->withHeader('Content-Type', 'application/json');
多くの場合、リクエスト上でヘッダーとレスポンスのボディーを設定することになるでしょう。
// ヘッダーとステータスコードを割り当てます
$response = $response->withHeader('Content-Type', 'application/json')
->withHeader('Pragma', 'no-cache')
->withStatus(422);
// ボディーに書き込みます
$body = $response->getBody();
$body->write(json_encode(['errno' => $errorCode]));
ミドルウェアは無名関数(クロージャ)として、あるいは呼び出し可能なクラスとしても実装できます。
クロージャは小さな課題に適している一方で、テストを行うのを難しくしますし、複雑な Application
クラスを作ってしまいます。 CakePHP のミドルウェアクラスは、いくつかの規約を持っています。
ミドルウェアクラスのファイルは src/Middleware に置かれるべきです。例えば src/Middleware/CorsMiddleware.php です。
ミドルウェアクラスには Middleware
と接尾語が付けられるべきです。例えば
LinkMiddleware
です。
ミドルウェアはミドルウェアのプロトコルを実装することを期待されています。
(まだ)正式のインターフェイスではありませんが、ミドルウェアは緩やかなインターフェイス あるいは‘プロトコル’を持っています。そのプロトコルとは下記のようなものです。
ミドルウェアは __invoke($request, $response, $next)
を実装しなければなりません。
ミドルウェアは PSR-7 ResponseInterface
を実装したオブジェクトを返さなければなりません。
ミドルウェアは $next
を呼ぶか、独自のレスポンスを作成することによって、レスポンスを
返すことができます。我々の単純なミドルウェアで、両方のオプションを見ることができます。
// src/Middleware/TrackingCookieMiddleware.php の中で
namespace App\Middleware;
use Cake\I18n\Time;
class TrackingCookieMiddleware
{
public function __invoke($request, $response, $next)
{
// $next() を呼ぶことで、アプリケーションのキューの中で
// *次の* ミドルウェアにコントロールを任せます。
$response = $next($request, $response);
// レスポンスを変更する時には、 next を呼んだ *後に*
// それを行うべきです。
if (!$request->getCookie('landing_page')) {
$expiry = new Time('+ 1 year');
$response = $response->withCookie('landing_page' ,[
'value' => $request->here(),
'expire' => $expiry->format('U'),
]);
}
return $response;
}
}
さて、我々はごく単純なミドルウェアを作成しましたので、それを我々のアプリケーションに 加えてみましょう。
// src/Application.php の中で
namespace App;
use App\Middleware\TrackingCookieMiddleware;
class Application
{
public function middleware($middlewareQueue)
{
// 単純なミドルウェアをキューに追加します
$middlewareQueue->add(new TrackingCookieMiddleware());
// もう少しミドルウェアをキューに追加します
return $middlewareQueue;
}
}
ルーティングミドルウェアは、アプリケーションのルートの適用や、リクエストが実行するプラグイン、 コントローラー、アクションを解決することができます。起動時間を向上させるために、 アプリケーションで使用されているルートコレクションをキャッシュすることができます。 キャッシュされたルートを有効にするために、目的の キャッシュ設定 をパラメーターとして指定します。
// Application.php の中で
public function middleware($middlewareQueue)
{
// ...
$middlewareQueue->add(new RoutingMiddleware($this, 'routing'));
}
上記は、生成されたルートコレクションを格納するために routing
キャッシュエンジンを使用します。
バージョン 3.6.0 で追加: ルートのキャッシュは 3.6.0 で追加されました。
SecurityHeaderMiddleware
レイヤーは、アプリケーションにセキュリティ関連の
ヘッダーを簡単に適用することができます。いったんミドルウェアをセットアップすると、
レスポンスに次のヘッダーを適用します。
X-Content-Type-Options
X-Download-Options
X-Frame-Options
X-Permitted-Cross-Domain-Policies
Referrer-Policy
このミドルウェアは、アプリケーションのミドルウェアスタックに適用される前に、 流れるようなインターフェースを使用して設定されます。
use Cake\Http\Middleware\SecurityHeadersMiddleware;
$securityHeaders = new SecurityHeadersMiddleware();
$securityHeaders
->setCrossDomainPolicy()
->setReferrerPolicy()
->setXFrameOptions()
->setXssProtection()
->noOpen()
->noSniff();
$middlewareQueue->add($securityHeaders);
バージョン 3.5.0 で追加: SecurityHeadersMiddleware
は 3.5.0 で追加されました。
CSRF 保護は、ミドルウェアスタックに CsrfProtectionMiddleware
を適用することにより、
アプリケーション全体または特定のスコープに適用できます。
use Cake\Http\Middleware\CsrfProtectionMiddleware;
$options = [
// ...
];
$csrf = new CsrfProtectionMiddleware($options);
$middlewareQueue->add($csrf);
オプションは、ミドルウェアのコンストラクタに渡すことができます。 利用可能な設定オプションは次の通りです。
cookieName
送信するクッキー名。デフォルトは csrfToken
。
expiry
CSRF トークンの有効期限。デフォルトは、ブラウザーセッション。
secure
クッキーにセキュアフラグをセットするかどうか。
これは、HTTPS 接続でのみクッキーが設定され、通常の HTTP 経由での試みは失敗します。
デフォルトは false
。
httpOnly
クッキーに HttpOnly フラグをセットするかどうか。デフォルトは false
。
field
確認するフォームフィールド。デフォルトは _csrfToken
。
これを変更するには、FormHelper の設定も必要です。
有効にすると、リクエストオブジェクトの現在の CSRF トークンにアクセスできます。
$token = $this->request->getParam('_csrfToken');
バージョン 3.5.0 で追加: CsrfProtectionMiddleware
は 3.5.0 で追加されました。
CsrfProtectionMiddleware
は、シームレスに FormHelper
と統合されます。
FormHelper
でフォームを作成するたびに、CSRF トークンを含む隠しフィールドを
挿入します。
注釈
CSRF 保護を使用する場合は、常に FormHelper
でフォームを開始する必要があります。
そうしないと、各フォームに hidden 入力を手動で作成する必要があります。
リクエストデータパラメータに加えて、特別な X-CSRF-Token
ヘッダーを通じて
CSRF トークンを送信することができます。ヘッダーを使用すると、重厚な JavaScript
アプリケーションや XML/JSON ベースの API エンドポイントに CSRF トークンを簡単に
統合することができます。
CSRF トークンは、クッキーの csrfToken
で取得されます。